5,でんぷん糖


 でんぷん糖とはでんぷんを原料にして、これらを酸化、酵素糖化してつくられた糖類の総称である。ブドウ糖や水飴もそのなかに入る。
 かつては原料にさつまいもやジャガイモが用いられたが、現在はその主流がトウモロコシやタピオカ等の輸入品にとって変わられている。

 でんぷん糖の製法
大きくわけて二つの製法がある。

1,酸糖化法  原料を蓚酸や塩酸や硫酸で加水分解する→できた糖化液を中和する→着色しているので活性炭で脱色する→イオン交換樹脂膜で精製する、→濃縮する。
 この方法においては不純物と風味に苦みを生じるという欠点がある。

2,酵素糖化法 原料を液化酵素(αアミラーゼ)で液化する。→この溶液(デキストリン)を糖化酵素(グルコアミラーゼ)で糖化する。→着色しているので活性炭で脱色する→イオン交換樹脂膜で精製する、→濃縮する。

この行程はでんぷんをデキストリンに分解し更にデキストリンをぶどう糖と若干のアルコールと二酸化炭素に分解する。
 行程の途中で反応を止めるとブドウ糖とデキストリンの比率が変わるデキストリンは粘りをもちブドウ糖は甘味を持つので糖化の度合いをDEという数値であらわす。
 DEとはブドウ糖を全固形分で割って100を掛けたものである。
 DEが高いほど粘度が低く甘みが強い。(結晶ブドウ糖)DEが低いほど粘度が高く甘みが低い(水飴)
 デキストリンが多いほど糖結晶作用を抑制し、吸湿性が大である。
 デキストリンが低くブドウ糖が多いとき(いわゆるDEが高い)ときほど結晶性がおおきくなる。

ブドウ糖(グルコース)
 ブドウ糖とはその名が示すように果物に多く含まれている。植物の光合成によって水と炭酸ガスから作られている。

 ブドウ糖はその形状から右旋糖(デキストローズ)と呼ばれ水中でα型からベータ型に変化する。このため初期は甘味が強く次第に甘味が弱くなる。

 ブドウ糖の吸湿性について
 ブドウ糖は吸湿性が強く室温20度湿度60%に1時間放置すると吸湿量は0.07%になる。これは蔗糖の7倍にあたる吸湿量である。

 ブドウ糖の耐熱性について
 ブドウ糖は熱に対して弱く、110度で1分子の水を失い、結晶性も失われる。130度で分解し始め、154度になるとカラメル化する。
 これらの変化は蔗糖よりかなり低温で起こるので、製菓時はより早くかつ強く焼き色がつく。

 ブドウ糖の種類について
 市販されているブドウ糖は、1、結晶ブドウ糖2、無水ブドウ糖3、精製ブドウ糖4、液状ブドウ糖である。


 飴についての考察

 飴は日本古来の麦芽糖から水飴、シラップまでその種類は書ききれないほど多い。

 1、麦芽糖 700年以上もまえ一説によれば縄文時代から作られてきたといわれる。原料にもち米、うるち米、破砕米、とうもろこし、粟などが用いられている。
 もち米から作られる麦芽糖は品質が良く、高級品とされてきたが、近年では、サツマイモ(甘藷でんぷん)を原料にしているところが多い。
 
 麦芽飴の作り方は次の如し
 でんぷんを麦芽もしくは液化酵素(ベータアミラーゼ、αアミラーゼ)で液化する(デキストリンを作る)→乾燥麦芽の滲出液(マルトアミラーゼ)で糖化する→ 濾過してアクを取り除き、濃縮して製品にする。最近の濾過法は活性炭で脱色した後フィルタープレスで濾過する方法が用いられることが多い。

 麦芽飴の甘味は、麦芽糖すなわちマルトースによるもので、分子構造的には2分子のブドウ糖を結合した形のもので、その甘味度は蔗糖の2分の1から3分の1である。
 その性質は水に溶けやすく環状構造は右旋性で、融点は102度から103度で熱に弱い性質を持っている。
 麦芽糖には独特の風味があるので、いろいろな製菓原料として用いられるが35度前後でも溶けない性格を利用してキャラメルに用いられる(夏の溶融防止対策)ことが多い(日本の生産量の80%といわれる)

 水飴
 日本の水飴は熱酸化糖化糖である、その製法は次の如し

 でんぷんを酸で熱分解しブドウ糖デキストリンの混合溶液を作る。→酸を中和する→着色しているので活性炭で脱色する→イオン交換樹脂膜で精製する、→濃縮する。

 水飴 には農林規格がないので、分解の程度を自由にすることができる。
 DEの高いものはブドウ糖が多いので、褐色反応(メイラード反応)が強く出る。ただし粘性は低い。

原料による粘性の変化
 一般に地上でんぷんは、タピオカ等の地下でんぷんに比べるとやや粘性が強く一概にDEの数値だけでは判断することはできない。

 上記のように水飴は その粘性と保水性という特徴を生かして、長時間柔らかく保つための「シャリ止め」に、キャンデー等の飴菓子に使用されることが多い。
 ただし吸湿性も飛躍的に向上するので、季節や菓子の性格によっては、水飴の量を調節することが肝要である。

 酵素転化糖についての考察

 酸だけを用いて糖化させた酸転化糖に比べて酵素転化糖とは酵素反応を利用してさながら人体の中で行われている生化学反応を利用した製法である。
 使用する酵素によってブドウ糖やマルトースの精製量に差が出る、又、DEの程度つまりどの程度反応させるかによって性質の異なった水飴ができるのである。
 転化製品は甘味度、粘度、吸湿性などが使用目的にあった水飴ができるのである。一般的に多い製品はデキストリンがやや少なく、マルトースがやや多く含まれたものが多い。

 粉末水飴
粉末水飴は、水飴を真空乾燥もしくは乾燥塔による熱風噴霧乾燥によって水分が5%以下にしたもので、その用途は広く多種の製品に用いられている。
 その形状は白色の粉末で、DE15〜30%のものが適している。通常の水飴よりDEが低くデキストリンの混合割合が多い、水に溶かすと強い粘度を現わし、甘味は水飴よりも低い。アイスクリーム、コーヒー牛乳、ドロップ、クリームサンド、清酒などに使用される粉飴は、DEが22.7くらいであまり高くなりすぎると吸湿性が強くなり、低いと精製が困難になる。このDE22付近はその甘みからの添加量とその結果できる粘度が適当で清酒等の独特の粘度の精製に一役買っている。

 モルトシラップ
 でんぷんを麦芽(モルト)で糖化し、濾過して、水分25%位濃縮したもので、麦芽糖、デキストリンの混合溶液を主成分とし、無機質(麦芽成分、芳香)蛋白質の分解物(アミノ酸)麦芽酵素のαアミラーゼ、ベータアミラーゼ、プロテアーゼ等を含んでいる。
 その特徴は褐色の独特の粘性があり特殊な芳香を持つ、パンに使用すれば、小麦粉の性質物性を改善し、生地を夜話楽して、成形性が向上する。ビスケットに2〜3%添加すれば、焼き色が良くなりつやが増し、水分の保持力が増して、特有の芳香を有する製品ができる。