{13}小麦粉と他の材料との関係、働きについての考察

小麦粉に混ぜ込んで、製菓加工をするとき、他の材料、たとえば、砂糖、油脂、塩、乳化剤、酵素等はこのような、反応をおこし、どのような、役割をしているかを探索してみる。

イ、小麦粉と砂糖
 砂糖は材料に甘みを与えるだけでなく、その配合比率によって、小麦粉をいろんな性質の変化をさせている。

@ 食パンのように、砂糖の含有量がすくない場合は、また、相対的に見て、他の副資材もすくないときは、パンの表皮にほどよい焼き色を付ける働きをする。
 これは、加熱によって、砂糖のカラメル化したモノとと小麦粉中のアミノ酸がメイラード反応を起こして褐色化するためである。この時はほのかなフレーバーもつく。
 ただし、フェルメイドリラックスという酵素を用いるともっと顕著でほどよきフレーバーもつく。
A 砂糖には、結晶水を抱く効果、すなわち、保水性があるので、製品の中で水分を保持し、でんぷんの再ベータ化を遅らすことができる。

B 砂糖は水に良く溶ける性質がある。これを逆用して、水を与えない環境においてやると、周囲から水を奪おうとする。この性質を利用し、小麦粉と砂糖と水の配合によっては、小麦粉の吸水する量が減る。その結果、小麦でんぷん含水量がへり、糊化温度が高くなる。つまり、小麦粉の焼成温度があがることになる。

C 砂糖はグルテンの間に入り込んで、グルテンの結合力を弱める。砂糖が多量に入った菓子パンをつくるときは、最初の混合時には、少量の砂糖を使って、イーストをはたらかせ、十分に生地中のグルテンがつながってから、他の副資材をいれ、最後にのこりの砂糖を混ぜると失敗がすくない。
 ただし、実際の現場では、このような手間をかけずにリッチな砂糖の沢山入った配合をつくりイースト量を減らして、直ごね方でイッキニ発行させて焼成している。

ロ、油脂 油脂は、味も風味もよく、カロリーや栄養も豊富な為、加えられることが多い。

@油脂はグルテンと結合して複合体を作るため、グルテン形成は弱まって、ドウやバッターはそのボデイがやわらかくなる。
 生産現場の技量がひくくても(パートさんに生地を創らすような場合)少々雑にラフに生地を長時間ほったらかしでこねてもグルテンが形成されにくい。
 このため、スポンジケーキやビスケット、クッキー、小麦粉煎餅等に配合には油脂がよく使われる。
 
 Aクッキーなどで、油脂を多量につかうと、柔らかく、もろく、食べ心地の良い、やさしい歯ごたえのある製品ができる。この場合、配合量が増えると、パンでいう中落ちのような症状がでることがあるが、このような場合は、
1,玉子の気泡性をあげる
2,2重乳化剤をつかう
3,砂糖、小麦粉、を粉体あわせしてミキシングの時間をへらす
4,中力粉もしくは強力粉を1割ないし2割薄力粉と入れ替える
のような対策をとるとよい。 



ハ、小麦粉と塩の関係
 製パン時の常識となっているように、塩は、グルテンに作用して生地を引き締め、粘弾性を強める働きがあるので、塩を入れた生地は接着性がよく、良く延びるようになる。この性質を利用して製麺を行う。
 また、菓子では、良く延ばしたい生地、そばぼうろや、パイ生地を作るときに塩を添加する。 ドイツ菓子に代表される欧州のナッツやでんぷんを小麦粉の半分以上配合する菓子では、塩のグルテン結合力効果を利用して、ナッツ、でんぷんのつなぎ効果を出している。

ニ、小麦粉と酵素との関係
 小麦粉の中には、
 1,糖化酵素として、ベータアミラーゼ、→でんぷん、デキストリンを麦芽糖 ブドウ糖に変える。→多分子のでんぷんを端から順番に分解して、麦芽糖(分解途上)、単糖(ブドウ糖)にかえる。→生地中のでんぷんに作用して、生地をやわらかくする。麦芽糖ブドウ糖を生成して生地の着色がきれいになる。
 2,液化酵素として、アルファアミラーゼ→せんぷんをデキストリンに変える。→多分子のでんぷんを6っつから12コの分子のアミラーゼに変える(液化)→生地中のでんぷんに作用して、生地をやわらかくする。→後味は悪くなる。
 3,タンパク質分解酵素として、プロテアーゼ→グルテンをアミノ酸、ベアチターゼ→ペプチドをアミノ酸、パパイナーゼ→タンパク質をアミノ酸、→生地中のグルテンに作用してその結合力をよわめ、生地の進展性をよくする。
4,還元酵素として、タカラーゼ→過酸化水素を水と酸素に
 5,酸化酵素としてパーオキシターゼ→すべてを酸化する、チロシナーゼ →チロシンをメラニンに →生地中のグルテンに形成をよくし製パン性が高まる。
 6,脂肪分解酵素として、リパーゼ、→脂肪酸とグリセリンに、フォスファターゼ、→リン酸エステルをリン酸塩に→生地中に生成した脂肪酸とエステルはグルテンをやわらげ、焼成時のフレーバをよくする。