製パンと乳酸菌

 一般的にパンの醗酵は、イーストによって行われていると考えられているが、乳酸菌もパン生地の中で活動し、焼き上がりのフレーバーに大きく貢献している。

 市販の天然酵母種には普通乳酸菌と酵母が同量入っている。又、当然ではあるが一般細菌は少ない。
 私たちが普段手にすることの出来る生地種には、酵母菌の数倍の乳酸菌がそれもそれぞれ別個の性質をもって存在する。
 もし、乳酸だけを必要とするのならば、ホモ発酵型の乳酸菌を用いるとよい。サワー種の乳酸菌がこれであり、ホモ発酵型の特徴として完全に乳酸だけを生成する。代表的なものは、ラクトパチルス バランリメンタリウスなどである。

 これに対してヘテロ型乳酸菌は、乳酸とアルコールと酢酸を作る。風味的には前述のホモ型とヘテロ型が混在する方が酸味があっておいしい。
 最近の研究で多種の天然酵母種から様々な乳酸菌が検出されている。

1、乳酸菌の特徴

乳酸菌は酸素のないところでも生育が可能であり、糖類を醗酵し乳酸を生成する。

 また、人間の要求する5大栄養素(糖類、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、無機塩類)を必要とし、十分に整っていないと生育しない。つまり、人間が食物としているものには生息していると考えてよい。

 

2、乳酸とたんぱく質との関連

たんぱく質は乳酸と混じると柔らかくなり、柔軟性や伸展性がよくなる。

 

3、パンと乳酸菌

 欧米各国に見られるサワーブレッドは乳酸菌の特徴がよく現れている。

 @ライ麦で作るライサワーブレッド

 A小麦粉で作るホイートサワーブレッド

サワーブレッドは通常のパンに比して保湿性がよく、しっとりとし、カビが生えにくい。

そして、独特のよいフレーバーを持つ。それは、乳酸菌のもつ独特のマスキング効果と関連している。

 この効果に鑑み、最近、通常のパン生地にサワーを添加して風味改良をおこなっているウィンドベーカリーが多い。


 ラクトパチルス型乳酸菌のパン生地や製品に及ぼす影響についての考察
1,生地の物理的性状や化学的性状への考察
 乳酸菌が生成する有機酸(乳酸、酢酸)による小麦蛋白への化合によって軟化、もちもち感が生じる、生地の物性完全効果が大である。
2,生地の成分組成への影響について
 遊離アミノ酸、ペプチドの増加、ミネラルの増加、パンの風味や美味さのの向上、焼成時のフレーバーの生成の結果パン製品の風味改善効果
3,パンの微生物に対する安定性について
 各種有機酸の増加、パクテリオシン(抗菌性蛋白質)の生成による保存性向上
4,パン食による人の健康維持と健康増進
 現在医学的に知られている生きた乳酸菌の人への効果は、

@乳糖不耐性改善

A腸内病原菌抑制

B小腸細菌過増殖抑制

C免疫系の調整

Dアレルギー軽減

E血中脂質低減による心臓病予防

E高血圧の低下

F尿道感染予防

Gピロリ菌感染防止

H肝臓病予防

Iコレストロール上昇抑制効果→乳酸菌添加パンの胆汁酸結合能がより高く、その結果肝臓でコレストロールが胆汁酸に変わることによる。現象的には腸管循環が改善される。

などである。


このように乳酸菌添加のパンは美味しいだけではなく、その健康に対する効果は計り知れないものがある。読者諸賢も乳酸菌研究を怠らないことを期待する。