生地中の小麦粉成分について
小麦粉の種類によってミキシング時間は大きく異なる。
1、強力粉は、生地の粘度が最高に達するまでミキシングタイムが長い。なかなかブレークダウンをおこさない。
2、薄力粉は、生地の粘度が最高に達するまでミキシングタイムが短い。すぐにブレークダウンを起こす。
3、中力粉は、その中間の性格をもつ。
小麦粉のたんぱく質について
小麦は8から14パーセントのたんぱく質を含有する。その最大の特徴は水と反応して形成されるグルテンで、これに匹敵する(天然人工を問わずに)高分子化合物は存在しない。
小麦たんぱく質の内訳
1、水および中性の塩類溶液の溶けるアルブミン
特質は加熱すると凝固沈殿する。
2、水に溶けない、5から10パーセントの食塩水によくとけるグロブリン
特性は加熱により凝固沈殿。
3、両者にて小麦蛋白の10パーセントを占める。
グルテン形成の本体ではないが、その役割は酵素活性と、SH基の供給源としてグルテンの性質を形作る。通常、両者まとめて、水溶性たんぱく質という。
4、水と食塩水にはとけないが、70パーセントエタノールに溶けるグリアジニン
5、水、食塩水、70%エタノールには溶けないが、アルカリ溶液に溶けるグルテニン。
6、上記どの溶液にも溶けない残り20から30パーセントのたんぱく質を不溶性たんぱく質というがこれは分類上グルテニンに属す。
グリアジンについて
1、分子量7万あまりの高分子化合物でSH基とSS結合はもっていない。
2、水和したグリアジンはよく伸びる粘着性を生地に与える。
3、オーバーミキシングした生地の性格に似ている。
グルテニンについて
1、中性の70パーセントエタノールに溶けない高分子化合物。
2、多糖類の塊同士がSS結合でつながった構造をもっている。
3、SS結合は弾力性に富む性質を生地に与える。
4、最適なミキシングの状態の生地の性格ににている。
小麦粉中のたんぱく質とミキシング
1、たんぱく質7.5パーセントで5分、12パーセントで2分、たんぱく質が増えるとミキシング時間がみじかくなる。
2、たんぱく質含有量が増えると給水率もあがる。
3、水の添加量を減らすとミキシングは短くなる。増やすと長くなる。
小麦粉でんぷんについて
1、小麦粉の70パーセントをしめパン生地の形成に大いに影響する。
2、グルコースが連続して結合した多糖類で、直線状に連なったアミロース(α1.4結合)と網目状に広がった構造のアミロペクチン(アルファ1.6結合)
3、焼きあがったパンの性質や老化に関係する。
4、粒子径は2から7ミクロンの球状のものと15から30ミクロンのレンズ上のものがある。
5、球状が76パーセント、レンズ状が7パーセントの比率である。
6、レンズ状に含まれるアミロースは30パーセント、球状に含まれるアミロースは18パーセントである。残りはアミロペクチンである。
良く膨れたパンの条件と澱粉
1、イースト酵母の活動が活発で炭酸ガスが出てその気泡によって膨れること
つまり、グルテン(たんぱく質)がガスを良く囲い込めること
2、パン生地が焼きあがったときにダウンしない(窯落ちしない)
澱粉がよく糊化すること。
3、澱粉は生地中ではコンクリートの砂利に相当すると考えてよい。
4、澱粉は温度の上昇にしたがって水分を吸収し膨張し、糊化する。
澱粉の吸収する水分が少ないとコンクリートに例えれば乾いていない状態になり、パンがダウンする。
5、澱粉の役割は生地の焼き上げ前は水を吸収しないので生地の流動性を保ち、焼き上げ時はどんどん吸収して焼き上げたパン生地の固定化に役立つ。
小麦脂質について
1、小麦粉には2パーセントの脂質が含まれる。
2、脂質はミキシングや製パン特性に影響しない。
界面活性剤のミキシングへの影響
1、水に溶けると溶液の表面張力を低下させる化合物である。
2、乳化剤として呼称され、卵白もこの性質をもつ。
3、水に溶けやすいものと解けにくいものがあり、親水性と疎水性の比率をHLB科であらわす。
4、陰イオン界面活性剤であるSSLは、0.5から2パーセントの添加で生地の安定性をよくする。
5、焼きあがったパンの老化を抑制する効果がある、(水分活性が維持される)